重度の障がいがある方に対応したグループホームの支援体制は?相談支援専門員が押さえておきたい10の視点
国の方針として、重度の障がいがある方の地域移行が本格化する中、グループホームは利用者の生活を支える重要な社会資源です。
ご家族の高齢化や「親亡き後」への不安を背景に、医療との連携体制や質の高い支援へのニーズは、ますます高まっています。しかし、事業所ごとの支援体制や人員配置の実情は分かりにくく、最適な施設を選び出す作業は決して簡単ではありません。
こうした状況のなかで、相談支援専門員には、確かな情報に基づき一人ひとりに合った支援先を見極め、提案する専門性がこれまで以上に求められています。

重度障がい者向けグループホームとは?支援区分・人員・個別支援の視点で解説
グループホームにおける「重度障がい者対応」とは、主に障害支援区分が高い方(一般的に区分4以上)を対象に、日常生活のサポートに加え、医療的ケアや行動面への専門的な配慮が求められる状態を指します。「重度障がい」と一括りにしても、利用者の状態はさまざまです。身体機能の低下に加えて医療的ケアが必要な場合もあれば、強度行動障がいといった精神面の支援が中心になる場合もあります。
「重度障がい者対応」のグループホームは、利用者本人の状態に応じて、より手厚くきめ細やかな支援を提供する体制が整えられた施設といえるでしょう。
障害支援区分とは?重度と判断される基準を知る
障害福祉サービスの必要性を客観的に判断する指標が「障害支援区分」です。身体・知的・精神の各障がいについて、全国共通の評価項目に基づき1〜6の段階で支援の必要度が判定されます。このうち、支援区分4以上の方はサポートの必要度が高い「重度障がい」にあたる場合が多く、グループホーム選びでは「重度対応型」も有力な選択肢です。
ただし、障害支援区分はあくまで制度上の目安であり、区分3以下でも日常生活で高い支援ニーズを持つ方もおられます。相談支援専門員は、区分のみで判断せず、ご本人の生活状況や希望を含めた多角的な評価が求められます。
重度対応に必要な人員配置と職員の専門性
重度な障がいのある方の生活を支えるには、通常よりも手厚い人員配置が欠かせません。例えば「日中サービス支援型」のグループホームでは、日中に常駐する職員の人数や、所持する資格といった基準が明確に定められています。夜間も宿直ではなく、必要に応じて即時対応できる職員体制が求められる場合もあるでしょう。
また、職員には高い専門性が求められます。強度行動障がいのある方を支援する際には「強度行動障害支援者養成研修」の修了が、医療的ケアが必要な方を支援する場合は「喀痰吸引等研修」を修了した職員の配置が必須です。研修や経験を積んだ職員による専門的かつ、きめ細やかな支援によって、ご本人もご家族も安心して暮らせる環境が整います。
医療的ケアが必要な方への受入れ体制
重度の障がいがある方の中には、医療的ケアを日常的に必要とする方もいます。具体的には、経管栄養・喀痰吸引・導尿・気管切開部の管理といった、医師の指示に基づいた専門的処置への支援です。
医療的ケアが必要な方のグループホーム入居には、看護職員の配置と医療機関との連携が不可欠。日中サービス支援型や、医療連携体制加算のある施設は、24時間対応が可能となる場合も多く、重度の障がいがある方にとっても安心して暮らせる選択肢です。
強度行動障がいがある方への支援体制と職員の専門性
「強度行動障がい」とは、自傷行為・他害・パニック状態といった、日常生活に大きな困難をもたらす行動を継続的に示す状態を指します。知的障がいや発達障がいのある方に多く見られ、ご本人にとっても周囲にとっても、支援には高い専門性が必要です。
グループホームでは、強度行動障害支援者養成研修を修了した職員の配置や、個別の行動支援計画の策定が推奨されています。職員間の連携と支援技術の共有、そして本人の行動の背景にあるニーズや感情を的確に捉える視点が、支援の質を左右します。
“その人らしい暮らし”を支える個別支援計画
重度障がい者対応とは「重い障がいがある分、多くの支援が必要」といった単純な話ではありません。大切なのは、ご本人の生活スタイルや意思が尊重され、個々の状態に合った支援が提供されるかどうかです。
例えば同じ区分6の方でも、医療的ケアが中心の方と行動面での困難が大きい方とでは、支援内容は全く異なります。グループホームでは、アセスメントに基づいた個別支援計画を丁寧に作成し、定期的な見直しを重ねながら、「本人らしい暮らし」の実現を目指します。
重度の障がいがある方の地域生活を支える日中サービス支援型と加算制度
重度の障がいがある方への支援は、国の制度や仕組みによって支えられており、グループホームにおいては専門的な体制づくりが促されています。なかでも「日中サービス支援型グループホーム」は、日中活動の場が限られる方にとって大きな支えとなる仕組みです。また、重度の障がい特性に応じて適用される加算制度は、質の高い支援を継続するうえで欠かせません。
日中も安心な「日中サービス支援型グループホーム」の役割
重度の障がいがある方の中には、通所先が決まらなかったり、医療的ケアが必要なため受け入れ先が見つからなかったりと、日中の居場所の確保が難しい方もいます。
こうした課題に対応するため、2018年度から新たに制度化されたのが「日中サービス支援型グループホーム」です。
日中サービス支援型のグループホームでは、日中から夜間にかけて常に一定数の職員が配置され、生活支援だけでなく日中の活動支援までを一体的に提供します。特に重度の知的障がい・身体障がいのある方や、日中活動先が見つかりにくい方にとっては、大きな安心につながる仕組みといえるでしょう。
また、通常のグループホームよりも手厚い人員配置基準が設けられており、支援の充実度が制度として保障されています。
〈日中サービス支援型グループホームとは〉
対象者 | 障害支援区分が高く、日中活動先の確保が困難な方など |
---|---|
特徴 | 日中も職員が常駐し、排泄・食事・移動・医療的ケアに対応 |
支援 | 医療との連携や個別支援計画の実施といった、きめ細かい支援が可能 |
手厚い支援の証「重度対応」に関わる主な加算制度
重度対応のグループホームでは、障がいの特性や支援ニーズに応じた複数の加算制度の組み合わせにより、専門性の高い支援体制を構築できます。例えば、医療的ケアや行動障がいへの対応、夜間の支援体制といったそれぞれの支援に適した加算により、個々に寄り添った質の高い支援の土台を整えるのです。
重度障害者支援加算
利用者の障害支援区分が高い場合(区分5や6など)、より多くの支援が必要と見なされ適用される加算です。身体介助や医療的ケア、行動支援には職員の人数が必要になる分、人件費などを補う目的があります。
医療連携体制加算
経管栄養・たん吸引・インスリン注射・導尿といった医療的ケアが必要な方への対応がある場合、看護職員の配置や訪問看護との連携体制の整備により算定できます。医師との連携や緊急時対応マニュアルの整備も評価対象です。
強度行動障害者支援加算
自傷行為や他害行為といった強度行動障がいのある方への支援には、特に専門性が求められます。専門研修を修了した職員の配置や、チームでの対応が加算の要件とされ、質の高い支援を促します。
夜間支援等体制加算
夜間や深夜に支援が必要な利用者がいる場合に備えた職員の配置や、緊急時にすぐ対応できる体制(オンコール対応)が整っているかを評価します。安心して夜間を過ごすためには、専門職による支援が重要です。
報酬制度が支援の質を支える理由
重度の障がいがある方への支援に対する加算制度は、事業所の収入を増やすためだけの仕組みではありません。利用者自身が、地域で安心して暮らしていくために欠かせない支援体制の整備と実現を後押しするために設計されています。
特に2024年度の障害福祉サービス等報酬改定では、支援の「質」に着目した評価が強化されました。例えば、利用者の希望を丁寧に聞き取り、日々の生活にしっかり反映させる個別支援の充実、医療的ケアや強度行動障がいへの対応力を備えた専門職の配置、夜間や深夜の安心を守るための体制整備も、報酬面で手厚く評価されています。事業所は、制度への正しい理解と利用者一人ひとりの暮らしに沿った活用により、支援の質の向上と継続性に繋げていく姿勢が求められます。

重度対応グループホームを選定する際に確認したい10の視点
障がいがある方にとって安心できる住まい選びは、人生を左右する大きな決断です。相談支援専門員として利用者に適したグループホームを見つけるためには、支援の方針や職員の姿勢、医療との連携といった表面上では見えにくい部分まで、しっかり確認しなくてはなりません。グループホーム内の雰囲気や細やかな配慮にも目を向けながら、一つひとつ丁寧に確認しましょう。
【1】事業所の理念と「利用者主体」の支援は明確か
重度の障がいがある方が安心して暮らすためには、グループホームの支援方針が「利用者主体」でなければいけません。理念として掲げているだけでなく、日々の支援の中に利用者を主体とする考え方がどう反映されているかを確認します。例えば、利用者の希望や個々に合ったペースを尊重した関わりが行われているか、職員一人ひとりが「利用者が求める暮らしを支えるには」と日々考えながら動いているか、といった点です。事業所の理念が現場で働く職員の支援行動にまで根づいているグループホームは、自然と支援の質も高まります。
見学の際は、管理者や職員に「どんな関わりを大切にしていますか?」と問いかけてみましょう。利用者の表情や過ごし方にも、ホームの支援姿勢はあらわれます。
<確認事項>
- 支援方針が利用者主体であるか
- 日々の支援は個々のペースや希望が尊重されているか
- 利用者の表情はよいか
- 事業所の職員の支援行動に根づいているか
【2】職員の専門性と継続学習が支える支援の質
重度の障がいがある方への支援には、専門的な知識と経験、そして継続的に学び続ける姿勢が求められます。グループホームの職員がどんな資格や経験を持ち、日々の支援にそれらをどう活かしているかを確認しましょう。
強度行動障害支援者養成研修や医療的ケア研修を修了した職員が配置されているかは、専門性を見極める一つのポイント。また、職員一人ひとりが継続して学ぶ意欲があるか、チーム内で利用者に必要な支援を共有できているかも、質の高いホーム選定の手がかりになります。
<確認事項>
- 職員の資格や経験
- 日々の支援に資格や経験が生かされているか
- 医療的ケアの研修修了者の配置
- 強度行動障害支援者養成研修の修了者の配置
- 職員の継続的な学習意欲
- 職員間の情報共有
【3】本人らしい暮らしを実現する個別支援計画と実践
利用者一人ひとりの希望や特性に寄り添った「個別支援計画」が、実際にきちんと作成されているかも重要な確認ポイントです。サービス管理責任者が中心となり、本人やご家族の声を丁寧にくみ取ったうえで、具体的な目標や支援内容が明確に示された計画が立てられているか。また、個別支援計画が定期的に見直され、生活の変化やニーズに応じた柔軟な対応がなされているかどうかを、しっかり見極めましょう。
さらに、書面上の計画だけで終わらず、日々の支援の中で職員が連携しながら実践できているかも大切です。見学の際には、計画の内容や作成プロセスについて質問してみると、実際の支援体制がより具体的に見えてきます。
<確認事項>
- 利用者や家族の希望に沿った個別支援計画が作成されているか
- 個別支援計画の定期的な見直しが行われているか
- 個別支援計画が日々の支援に活かされているか
【4】日常生活と日中活動を支える個別的で柔軟な支援
利用者一人ひとりの状態や希望に合った日常生活支援は、暮らしの質を向上させるために欠かせません。相談支援専門員は、事業所での食事・入浴・着替えのサポートが個々を尊重しながら行われているかを見定める必要があります。また、日中の過ごし方は利用者によってさまざま。仕事をする方、作業所へ通所する方、ホーム内で活動して過ごす方それぞれが、自らの意思を尊重され、生活に充実感を得られているかを観察しましょう。
見学の際に具体的な日課や活動内容について質問し、個別の対応がきちんとなされているかの確認をおすすめします。
<確認事項>
- 食事、入浴、着替えのサポートが、個人の尊厳に配慮し行われているか
- 利用者の意思が尊重され、日々の暮らしに充実感が得られているか
- 具体的な日課や活動内容は、本人の希望に沿っているか
【5】医療的対応力と強度行動障がいへの支援実績
たんの吸引や経管栄養といった医療的ケア、強度行動障がいのある方への支援には、専門性の高い対応力が求められます。グループホームに看護師が配置されているか、訪問看護との連携はあるか、緊急時に対応できる体制が整っているかを確認しましょう。
また、行動障がいに関する専門研修を受けたスタッフがいるか、具体的な対応実績があるかを尋ねると、ホームの対応力をより深く把握できます。
医療との連携体制や過去の受け入れ実績といった具体的な情報を聞き、安心して任せられる支援体制かどうかを見極めましょう。
<確認事項>
- 看護師の配置または訪問看護との連携体制
- 緊急時対応マニュアルの整備と職員への周知
- 行動障がいに関する研修修了スタッフの有無
- 医療的ケアや強度行動障がいのある方の具体的な支援実績
【6】権利の尊重と安心・安全な暮らしを実現する取り組み
グループホームは、利用者の暮らしの場であると同時に「人としての尊厳」が守られる場所でなければなりません。個人の権利を守るためには、権利擁護・虐待防止・プライバシーの保護に対する組織的な取り組みが必要です。
例えば、虐待防止に関する研修の実施や相談体制の整備、プライバシーに配慮した個室の管理方法や居室への立ち入りルールが挙げられます。こうした配慮が、普段の支援にきちんと活かされているか、利用者本人が安心して意見を伝えられる環境づくりがなされているかも、支援の質を判断する大切なポイントです。
<確認事項>
- 職員や利用者の人としての尊厳が守られているか
- 権利擁護や虐待防止への組織的な取り組み状況
- プライバシー保護への配慮(個室の管理、立ち入りルールなど)
- 利用者が意見を表明しやすい環境か
【7】家族との連携体制とコミュニケーションの質
グループホームでの安定した生活には、ご家族との連携も大きな鍵となります。家族と連携が取れている場合、日常的な情報共有がスムーズになり、利用者の変化や困りごとを早期に把握し、柔軟な対応に繋がります。
例えば、定期的な連絡や面談の場を設けているか、面会や外出のルールに柔軟性があるか、ご家族の声を支援に活かす姿勢があるかどうか。利用者だけでなく、家族も「支援のチームの一員」として尊重する姿勢に注目してみてください。
<確認事項>
- 家族との定期的な連絡や面談の機会
- 面会や外出のルールは、柔軟な対応が可能か
- 家族の意向が支援に反映される仕組み
- 家族を支援のパートナーとして尊重する姿勢
【8】地域社会との連携と社会参加支援の実績
重度の障がいがある方も、地域の一員です。グループホームが地域とどのようにつながり、利用者が社会と関わりながら生活できているかを見極めましょう。
地域のお祭りや行事への参加、近隣住民や商店との交流、地元のボランティアや医療福祉機関との連携の有無、社会参加のための工夫や実績を確認します。地域との良好な関係性は、災害時の安全確保やトラブル回避の観点からも重要です。
<確認事項>
- 地域の行事への参加や、地域住民との交流
- 地域の医療機関や福祉機関との連携状況
- 利用者の社会参加を促す具体的な工夫や実績
【9】外部評価などを通じた運営の信頼性向上への姿勢
信頼できるグループホームを選ぶうえで欠かせないのが、運営情報がきちんと公開されているかどうかです。サービス内容・職員体制・費用の内訳・苦情対応の仕組みを明確に示しているホームは、利用者や家族、支援者との信頼関係を大切にしているといえます。
また、福祉サービスの第三者評価や外部監査を受けているかも重要なポイント。こうした外部の目を通してサービスの質を見直し、改善に取り組んでいる姿勢があるかどうかを確認しましょう。評価結果や改善内容をオープンにしている事業所は、誠実な運営が期待できます。
<確認事項>
- サービス内容、職員体制、費用内訳の明確さ
- 苦情対応の仕組みと窓口の明示
- 福祉サービスの第三者評価や外部監査の受審状況
- 評価結果や改善内容の公開状況
【10】利用者・家族・関係機関から寄せられる声と事業所の信頼度
グループホームの実際の雰囲気や支援の質は、利用者やご家族、地域の支援機関といった、実際に関わっている人たちの声から見えてくる部分が多くあります。見学や資料では分かりにくい内情こそ、評判を通じて確認しましょう。
例えば、担当している他の相談支援専門員や医療機関のソーシャルワーカーに、利用者の様子や支援の丁寧さについて聞いてみるのも良いでしょう。また、安定した運営が続いているか、行政からの指導が入っていないかといった事業所としての実績も信頼性の判断材料。インターネット上の口コミだけに頼らず、多方面からの声を丁寧に聴き取り、後悔のない選定を目指しましょう。
<確認事項>
- 他の相談支援専門員やソーシャルワーカーからの評判
- 利用者の満足度や家族からの信頼
- 安定的、継続的な運営実績
- 行政指導などの有無
「受け入れは難しい」
と、これまでに断られた経験は
ありませんか?
ソーシャルインクルーは「住まいで困っている障がい者が『0』の社会」を目指し、重度の障がいがある方の暮らしを支える支援を日々実践している企業です。
私たちは、「どうすれば、その方らしい暮らしを実現できるか」を起点に、ご本人やご家族と一緒に考えます。
ソーシャルインクルーが運営するグループホームでは、強度行動障害支援者養成研修や医療的ケア研修を修了した専門スタッフが中心となり、本人の状態や希望に応じた計画的な支援を展開。
訪問看護ステーションや主治医・協力医療機関と日々の連携を図り、体調の変化や緊急時にも迅速に対応できる体制を整えている施設が複数あります。
こうした“支える力”の積み重ねが、安心して暮らせるグループホームの土台となり利用者1人ひとりの安心につながっていくのです。
グループホームの選定に際しては、ぜひ表面上の情報のみにとどまらず理念・体制・専門性をご確認ください。
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